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骨粗鬆症最新情報閉経後、なぜ骨粗鬆症になりやすいのかがわかってきました
慶應義塾大学の医学部整形外科教室の研究グループによりますと、
「低酸素環境で安定する蛋白HIF1αが閉経後の骨粗鬆症発症に重要な働きを担っている」ということを発見したそうです。
<女性の閉経と骨粗鬆症の密接な関係>
一般的に女性は閉経すると、骨密度が下がり骨粗鬆症になりやすくなります。
http://goo.gl/cH7a0
女性ホルモンの一種エストロゲンは、閉経後に急速に減少します。
また、閉経後に骨粗鬆症になりやい女性が大幅に増加することから、エストロゲンと骨粗鬆症との密接な関係が以前から指摘されていました。
<なぜ閉経すると骨粗鬆症になりやすいのでしょうか?>
しかし、エストロゲンと骨粗鬆症とが何らかの関係にあるということはわかっていても、なぜエストロゲンが骨粗鬆症の原因になっているのかの根本的なメカニズムはよくわかっていませんでした。
<蛋白HIF1αと閉経後の骨粗鬆症との関係とは?>
そこで、今回慶應義塾大学のグループ(以下グループ)が着目したのが、
低酸素状態で蛋白として安定化し機能を発揮するHIF1α(ヒフワンアルファ)
という蛋白の一種です。
このHIF1αという蛋白質の最も大きな特徴は、
「有酸素状態ではなく、低酸素状態で安定して機能(役割)を発揮する」
ということです。
これがいかに特異的かは、ちょっと考えてみればわかります。
一般的に人の臓器や細胞などは、酸素がある状態でなければ生きてはいけません。
そのため、細胞の周りには毛細血管などの血管が張り巡らされて酸素をヘモグロビンに乗せて運んでいるんですね。
この酸素が十分にある状態を「有酸素状態「」といいます。
しかし、このHIF1αという蛋白質は、これとは逆の「低酸素状態」で機能を安定して発揮する蛋白質なのです。
このHIF1という蛋白質は、今回の骨粗鬆症以前にも癌の転移に関係している蛋白質ということで話題となりました。
・HIF-1 αを分子標的とする卵巣癌治療へのアプローチ
http://goo.gl/LtJhzO
今回グループが着目したのは、破骨細胞という骨を破壊する細胞がある骨の表面がとても酸素濃度が低いという点でした。
つまり、先ほどの「低酸素状態」にあるのです。
さらに、閉経前のマウスではこの破骨細胞にはHIF1αの蛋白がほとんど発見されなかったのに、閉経後にはHIF1αが強く発見されたのです。
この2つの単純な事実をまとめて、関連付けてみますと
・骨の細胞を破壊する破骨細胞の骨は「低酸素状態」にある
・閉経前はHIF1αの蛋白はほとんど発見されなかった
・閉経後はHIF1αの蛋白が強く発見された
・閉経後は骨粗鬆症になりやすくなる
つまり、HIF1αが作る蛋白が破骨細胞に何らかの影響を与えてくるのではないかと考えられるのです。
そこでさらにグループでは、エストロゲンを人工的に欠乏させた閉経後マウスで、HIF1αを欠乏させた場合、なんと破骨細胞の活動が起こらなくなり、骨量の減少も起こらなくなったということです。
これ以外にもさまざまな実験を行った結果、HIF1αをコントロールすることで骨粗鬆症の治療に役立つ可能性が見えてきたのです。
グループでは今後HIF1αの抑制効果を確認することで、新しい骨粗鬆症治療薬が効果があるかどうかを素早く適切に検証できると期待しているということです。